マウントアダプターは秘密道具?(続編)

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前回の→ 「マウントアダプターは秘密道具?」では
マウントアダプターがどんなものであるかを説明いたしました。

 

今回は実践編として、
どのようなレンズを使えば良いのかを考えてみましょう。

 

ここで選択するレンズはいずれも
小生の所有品ですので 偏ったチョイスであることと、
描写に関する感想などは
あくまでも個人的な主観であることをご理解願います。

 

レンズの選択の基準は、
市場の流通量も豊富で、 価格的にも、
撮影する際の画角的にも使いやすい、
そのような視点からチョイスしたレンズを紹介いたします。

 

さっそくですが、
フィルムカメラ時代に
3 種の神器と言われたレンズは、
標準の 50mm、広角で 35mm、望遠は 90mm と
言われていました。

 

今回は、その 3 種の神器のレンズから、
また、マウントアダプターの種類を一つで
済ませられるように マウントは
L39 ライカスクリューで統一してみます。

 

最初は標準レンズ 50mm からです。
選択するレンズは、Canon50mm F1.8Ⅰ型となります。

このレンズは Canon
レンジファインダーカメラⅣSb 時代のレンズです。

 

Canon50mm F1.8 は改良を重ね
三世代にわたる歴史があります。

 

今回は、その中でも第一世代型と言われる
金属鏡胴の製品をチョイスしました。

 

第二世代、第三世代の製品は、
鏡胴に樹脂とアルミが用いられ、
形状もコンパクトになり軽量化されました。

 

第一世代レンズは、真鍮鏡胴製で、
ローレット加工、クロームメッキの質感も
美しく 重量感もあり、まさに往年日本の
加工技術の高さを誇る製品です。

この第一世代レンズは発売初期には、
「Serenar 銘」で発売されましたが、
ほどなく「Canon 銘」になりました。

 

このレンズはモノクロフィルム全盛の時代に
開発されたレンズですが
現代のカラーフィルムで使用しても
豊かな描写性には定評があります。

 

レンズマニアの間では
「和製ズミクロン」とも評されています。

 

次に広角 35mm レンズです。
L39 マウント広角レンズは余多ありますが、
今回はちょっと珍しい個体を紹介いたします。

 

Carl Zeiss いうメーカー名はご存知ですか?
昨今ではデジカメ用のレンズを発売もしています。
Carl Zeiss は 1846 年、
東西統一以前の東ドイツ・イエナに発祥します。

 

第二次世界大戦までは、
世界最高水準の光学製品を開発する会社でした。

 

第二次世界大戦でドイツが敗戦国となり
ドイツは東西に分断され イエナ東ドイツは、
ソ連に統治されます。

 

当時のアメリカは Carl Zeiss の
技術がソ連に移ることを恐れました。

 

光学技術は、軍事技術としてとても重要だからです。
そこでアメリカは、ソ連が東ドイツ統一の
進行以前にイエナを訪れ、
Carl Zeiss の主要技術者 125 名をアメリカに迎えたほどです。

 

このような経緯で CarlZeiss の
主要技術者はアメリカへと移りましたが、
残された工場設備、ガラス、金属などの材料、
主要技術者の薫陶を受けた技師はイエナに残りました。

 

ソ連はそれらの設備・技師と自国の技術者を使い、
光学製品を生産します。

 

クラシックカメラにはソ連製(ロシア製)の
製品が多くあります。

 

それらの機材は Leica コピーの製品もありますが
基本的には CarlZeiss の技術が導入されています。

 

ソ連製レンズに「銘玉」と言われる製品が多いのは、
このような背景に支えられていたからです。

今回はそれらの銘玉の中から、
Jupiter35mm F2.8 を取り上げてみます。

 

このレンズは Carl Zeiss 製カメラ CONTAX 用に
開発された Biogon35mm F2.8 の
完全なコピーレンズと言われています。

 

Contax カメラは「ロバート・キャパ」の
愛用機材として知られていますね。

 

このレンズを始めてご覧になった方は、
後玉ガラスの塊が剥き出しで驚かれることでしょう。

 

その理由は、レンズ構成が広角レンズの基本ともいえる
「対称型」であるためです。

 

「対称型」は広角レンズの基本設計と言われ、
Leica 用の SuperAngulon 21mm F4(改良型は F3.4)。

 

Nikon 製では Nikkor 2.1cm F4 などの銘玉があります。
対称型広角レンズは、後玉が剥き出しになるため一眼レフでは、
ミラーと干渉し使用が叶いません。

 

Nikkor2.1cm F4 は Nikon F などでも使用可能ですが、
その際はミラーアップをします。

 

この Jupiter35mm F2.8 レンズの描写性能は、
線は若干太めですが、 F2.8 の明るさもあるため
開放ではボケ味を楽しむこともできます。

 

そのボケは、対象物の輪郭を残しながらも
素直なボケと言われています。

 

広角レンズ特有の周辺光量落ちも
気にならない程度に抑えられています。

 

このレンズの生産期間は長く、
加工・組み立て精度、ガラス硝材の違いなどがあり
個体ごとの描写性能の違いを楽しむことも可能です。
(この違いを「バラツキがある」とも言いますが、、、、、)

最後に 90 ㎜望遠レンズです。
90mm~100mm 前後のレンズは「中望遠レンズ」と言われ
ポートレイトや風景撮影に適し焦点域と言われています。

 

その 90mm レンズの中からチョイスする一本は、
Elmar90mm F4(Elmar 9cm F4)です。

 

言わずと知られた Leica 用の一本ですね。
Elmar90mm F4 は Leica が、 システムカメラとして
発売された当初からラインアップされていました。

 

最初に製品化された 1931 年から
113,808 本も生産された事実を鑑みても
迷うことなき銘玉と思われます。

 

開放値が F4 と暗いレンズですが、
デジカメでは ISO 感度を、
自由に可変できるので問題にはなりませんね。

 

Elmar90mm F4 の描写性能は、
オールドレンズらしく全体的に柔らかく、
線は太くないながらも色乗りの良い描写です。

 

F8~F11 まで絞り込んでみると、
線が立ち、コントラストも上昇して引き締まった画になります。

 

ボケ味は、F4 という明るさながらも、
奥行きがあり、柔らかな描写をもたらします。

 

シリアル#592451 からはコーティングも施され
カラーバランスも整った性能を見せてくれます。

 

さて 3 本のレンズを、大げさに言えば、
古今東西、 当時の最高水準で製作された
個体をチョイスしてまいりました。

 

マウントアダプターを使用するということは、
世界中のオールドレンズを 現代の技術と
出会わせて楽しめる、 まさに、
秘密道具とおもいませんか?

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