カメラ業界の雄として一線を走り続ける Canon。
その進化の歴史の中で様々な技術が生まれ、
やがて消え ていきました。
その中でも今日は「視線入力 AF」について語ろうと思います。
視線入力AFとは?
そもそも視線入力 AF とは、
一眼レフのァインダーをのぞく際に
AF ポイントを見つめるとそれを検知、
そのポイ ントに合焦してくれるという代物です。
初めて搭載されたのは 1992 年発売の EOS 5 QD。
EOS-1 に次ぐ上位機種として
プロのサブ機として迎えられることも多かった機種です。
当時のキャッチコピーは
『あなたの視点が、写真を変える。』
世界初の新技術を前面に押し出したものとなっています。
視線入力 AF が搭載された機種は以下の通り。
・EOS 5 QD(1992 年発売)
・EOS 55(1995 年発売)
・EOS 7(2000 年発売)
・EOS 7s(2004 年発売)
・EOS 3(1998 年発売)
ここからは具体的な使用方法を紹介していきます。
視線入力 AF の使用にはまず、
自分の目の情報を登録(キャリブレーション)する
必要があります。
※今回例に挙げるのは EOS 5 ですが、
ほかの機種も大きな操作の違いはありません。
①モードダイヤルを「CAL」に設定します。
②メインダイヤルでどのデータに登録するかを 1~5 で選びます。
(目の設定は合計で 5 種類まで登録できます。)
③ファインダーを覗き、赤く光っている右端の測距点を見つめます。
④左端の測距点も同様に見つめます。 このときですが、
なるべく撮影する体勢になってのぞくと精度が上がります。
また、見つめる位置を変えずに眼球だけ動かす
イメージで登録すると上手くできると思います。
これで登録が完了しました。
次にこのデータを使って撮影をしてみましょう。
①クリエイティブゾーン(P、M など)にモードダイヤルを動かします。
②AF フレーム選択ボタンを押して、全点が光るようにダイヤルを回します。
③モードダイヤルを CAL にします。
④液晶画面の表示が先ほど登録した番号になるように、ダイヤルを回します。
⑤撮影したいモードにモードダイヤルを戻せば完了です。
設定が上手くできていればこれで使用可能になります。
なかなか AF フレームが思った位置に来ないときは
もう一度キャリブレーションを試してみてください。
さて一見するととても便利なこの機能、
なぜ現在のデジタル一眼には搭載されていないのでしょうか。
何より技術の限界によるものが挙げられます。
目の動きは日によって、
朝晩によって、また体調によっても変化してしまうため、
登録された目の情報をもとに検出する機構では
対応しきれなかったようです。
データは 5 つまで登録が可能ですが、
精度が出なくなったらデータを変えるというのは
面倒であるため 結局当時のカメラマンは
全点選択 AF や一点 AF を使うことも多かったと言います。
また、EOS 5 の段階では
AF ポイントが比較的離れた位置に 5 点だったため
そこまで影響はありませんでしたが、
のちの1998 年に登場した EOS 3 の測距点は実に 45 点。
一点あたりの領域が細かくなったことで
精度が出にくくなってしまったのです。
さらに縦位置での
撮影時にはこの機能は使えないため、
横位置から縦位置に持ち替えると
使用できなくな ってしまうという欠点もありました。
こうした背景から、
2004 年にフィルム EOS の中級機として最後に発売された
EOS 7s を最後に、
視線入力 AF はカメラ業界から
姿を消すこととなったのです。
現在ではカメラ側が被写体を自動で選択し、
100 点を超える AF ポイントを使って
カメラが自動で追従して撮影出来る時代となりました。
それに伴って以前よりも視線入力 AF の
必要性が低くなっていることも事実です。
さてこの「ロストテクノロジー」視線入力 AF ですが、
なんとミラーレス一眼向けの機構の特許が
キヤノンによって 出願されています。
まだ対応機種は登場していませんが、
現代の技術で当時の夢が実現出来たら…
とてもロマンがありますね。
とはいえフィルム EOS はまだまだ使える個体が多いです。
また価格も比較的手の出しやすいものが多く、
台数も多いことから初めての
フィルムカメラにもオススメです。
現在 Canon のデジタル一眼レフを使っている場合は、
フィルムカメラ用のレンズをデジタルカメラでも
共用で きるのが嬉しいポイントです。
(EF-S レンズはフィルムカメラには使用できませんが、
EF レンズであればデジタルカメラで使っていたものを
フィルムカメラで使用することが可能です。)
当店にも多数在庫がございますので、
技術の粋と技術者の夢の詰まった機能、
是非試してみてはいかがでしょうか。
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