【F2.5 VS F4】初代ニッコール10.5cm対決

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今回はニコンFマウント初期のレンズ、
Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5と
Nikkor-T 10.5cm F4
を比較していきたいと思います。

 

・どんなレンズ?

その前に、両レンズがどのようなものなのかを簡単にまとめていきます。

Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5はNikon F発売の2か月後である
1959年8月に発売されたレンズです。

その設計の源流はレンジファインダー用の同等レンズである
Sマウント/Lマウント用レンズです。
詳しい説明はニッコール千夜一夜物語の第四十五夜に掲載されています。

それに対してNikkor-T 10.5cm F4は、翌1960年に発売されたレンズです。

レンズ構成はF2.5と同じくSマウント用の同レンズと共通のものになっています。

また特徴として、レンズ名にAutoがつかないことが分かります。

ニッコールレンズにおけるAutoとは絞りの連動機構のことで、
これがあることで一眼レフカメラにおいて
シャッターを切る瞬間だけ絞り機構を動作させることができるのです。

このレンズでは絞りは連動せず、代わりにプリセット絞りが採用されています。

当時からこのレンズの位置づけは「廉価版レンズ」であり、
そのために最低限の機構のみが備えられています。

その軽量さなどから巷では「マウンテンニッコール」とも呼ばれています。

ちなみにこちらもニッコール千夜一夜物語第二十一夜にて取り上げられています。

 

・両レンズの比較~スペック編~

それでは両レンズの比較をしていきましょう。

まずはいくつか項目を抜粋した比較表をご覧ください。

レンズ レンズ構成 重量 フィルター径 最短撮影距離
Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5 3群5枚 約380g 52mm 1.2m
Nikkor-T 10.5cm F4 3群3枚 約230g 34.5mm 0.8m

やはり目立つのはF4レンズの小型軽量さでしょうか。

レンズは名前から分かるように3枚構成でトリプレットタイプを採用し
その結果軽量化も果たしています。

またフィルター径も当時ほぼすべてのレンズで統一されていた
52mm径ではなく34.5mmとなっています。

またF4レンズでは最短撮影距離が0.8mと、
F2.5レンズよりも40cm短くなっていることもポイントです。

この40cmは写真で見るととても大きな差です。


ピント距離1.2mで撮影


ピント距離0.8mで撮影

 

ちなみに2本のレンズを実際に並べてみるとこのようなサイズ感になります。

実は全長はF4レンズの方が長いです。

ただしフードをつけるとその長さはほぼ同じになります。

 


また実際にカメラに装着するとこのようになります。

今回は発売時期と合うNikon Fに装着してみました。

好みの範疇にはなりますが、
見た目のおさまりのよさではF2.5に軍配が上がるでしょうか。

 

・両レンズの比較~描写編~

それでは次に両レンズの描写を比較していきます。

今回は近景でのテストに絞り、
撮影距離はおよそ1.3m程度、
絞りは1段ごとの比較としました。

ボディはフルサイズのNikon Z6(2450万画素)、
純正のFTZIIを介した撮影です。

それでは見ていきましょう。

(中央部比較、周辺部比較ともにGoogleドライブに
原寸大の画像を掲載してあります。
以下からダウンロード可能です。)

中央部:https://drive.google.com/file/d/16Zxx3NcN-JJouXV2iKtK3fvPQOu2QkPr/view

周辺部:https://drive.google.com/file/d/1I2uzqNFtvoLdv6rEmSydMLY0UU-YhoK7/view

まずはピントを合わせた中央付近を見ていきます。

それぞれ単体で見ていくと、
F2.5レンズは開放ではふんわりとした描写をしますが、
1段絞ってF4とするとかなり安定した描写となり、
さらに1段絞ってF5.6とすると、
そこから先はF11までほとんど描写に差は感じられません。

それ以降は回折の影響を受けて画質低下が見られるといった印象です。

F4レンズは1段絞ってF5.6とすると像が引き締まり、
F11くらいまではほとんど描写の差は感じられません。

それ以降はF2.5レンズと同様に回折の影響を受けます。

次に双方のF4時で比較すると、
わずかにF2.5レンズの方が解像している印象を受けます。

ただし1段絞り込めばほとんど差は見られなくなります。

その一方で色ノリはF2.5レンズの方が一段上手に感じます。

 

次に周辺部を見ていきましょう。

こちらはどの絞り値においてもF4レンズの方が優秀な成績となりました。

F4レンズでは中央部と同様に1段絞り込んでF5.6とすると
ほとんど実用可能なレベルとなります。

一方でF2.5レンズはF8まで絞り込んでもやや像の流れが見られます。

 

周辺減光に関しては、F2.5レンズは2段ほど(F5.6まで)絞るとほぼ完全に解消されました。

それに対しF4レンズは2段(F8まで)絞ってもわずかに減光が残っており、
3段(F11まで)絞るとほぼ完全に解消されました。

なお開放同士での比較ではF2.5レンズの方が減光の度合いは大きく、
1段程度絞り込むことで急激に改善する傾向が見られました。

ただし望遠レンズにおいて周辺減光はあまり問題にならないことが多く、
周辺部の描写が重要となってくる風景撮影などでは絞り込んでの撮影が多いため、
そこまで致命的な問題ではないと思われます。

 

以上の近景を中心としたテストから、
F2.5レンズは画面中心の解像度が高く
開放時と絞り込んだ際の二面性が味わえるレンズ、

F4レンズは画面全体の均質性が高く
どのような条件でも安定した画像を得られるレンズ
という印象を受けました。

105mmという画角はおもにポートレートで使うことが予想されます。

ポートレート分野においてはF2.5レンズの
開放付近の描写はとても魅力的なものでしょう。

一方でF4レンズは「マウンテンニッコール」という愛称の通り
風景撮影などに向いたレンズとして、
それぞれによさのある2本だと感じました。

より明るいレンズ=良いレンズというイメージがありますが、
小ささ、軽さ、そして画質の傾向など、見れば見るほど
それぞれのレンズの魅力を知ることができました。

是非作品の特性を生かすレンズ選びを、
またレンズの特性に合った被写体選びをしてみてはいかがでしょうか。

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