ニコンFマウントレンズの最初期型「9枚絞りニッコール」を追う

Pocket

不変のFマウントと呼ばれ
1959年のNikon F。

発売以降Nikonの一眼レフカメラで
共通して採用され続けてきたFマウントです。
実は最初期のレンズには一部特殊なものが存在しています。

それが巷では「9枚絞り」と呼ばれる存在です。

・9枚絞りニッコールとは?

実はニッコールレンズの中で、
9枚絞りと呼ばれ特に区別されているものには
大きく分けて3種類があります。

それは

• 1959年から1961年ごろに製造された
4種類のレンズに一部存在するもの


• GN NIKKOR Auto 45mm F2.8の
前期モデルに一部存在するもの


• Nikkor-N Auto 35mm F1.4の
前期モデルに一部存在するもの

です。

この中で今回は1の最も初期に
発売されたものに注目していきます。

まずこの4種類のレンズとは

・Nikkor-S Auto 3.5cm F2.8(1959年8月発売)

・Nikkor-S Auto 5cm F2(1959年6月発売)

・Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5(1959年8月発売)

・Nikkor-Q Auto 13.5cm F3.5(1959年8月発売)

になります。

いずれも1959年8月までに発売されたレンズで、
Nikon Fの発売当時に
広角から望遠域を担っていたものです。

・4本の「9枚絞りニッコール」レンズ

しかしこの4種類のレンズすべてが
9枚絞りであるわけではありません。

いずれもおおよそ1961年ごろまでに
製造されたもののみが9枚絞りとなります。

その後は製造コストの削減の為からか
6枚絞りになっています。

9枚絞りのモデルの製造本数としては、

標準レンズとして比較的多く製造された
5cm F2が15000本程度、

それ以外の3種類に関しては
4000~5000本程度とされており、

この希少性からコレクターの
注目の的になっているというわけです。

ちなみに9枚絞りニッコールの中でも
特に最初期のものに「チックマーク」があります。

これはレンズの距離指標の表記の下に
小さな線が入れられているもので、
ほかにも赤外線フィルムでの
撮影時に使用する指標にR刻印が入れられています。
(これ以後のモデルにも指標はありますが
Rの文字は省略されています)

こちらは5cm F2でおよそ5000本、
それ以外の3種類では1000本以下と
かなり希少なモデルになっています。

・9枚絞りニッコールの特徴

この9枚絞りニッコールですが、
ただ単に玉数が少なく希少であるだけでなく、
いくつかの特徴も持っています。

まず最大の特徴は絞り羽根が9枚であることです。
6枚羽根のレンズと比べて絞りが
円形にかなり近く、玉ボケが綺麗になります。

また光条の本数も18本になるため、
夜景撮影などでも重宝すると思われます。

しかし9枚絞りニッコールには欠点があります。
それが互換性です。

このレンズは名前から分かる通り
Autoレンズであり露出計連動レバーが
干渉してしまうため通常のFマウントの
デジタル一眼レフカメラには装着できません。

さらに9枚絞りニッコールでは
本来オートニッコールが装着可能であるはずの
Nikon Dfでも使用することが
できない場合が多いと言われています。
(ただし個体差があるため装着できる場合もあるそうです。)

その理由は絞り環のスカートの高さです。

これらのレンズではこれ以降のレンズに比べて
絞り環が大きくマウントからせり出しており、
これがボディ側に干渉してしまい
装着できないとされています。

これはNikon Dfだけでなく、
ミラーレス一眼カメラで使用する際の
マウントアダプターでも同様のことが起こります。

そのため、デジタルでは9枚絞りの
レンズは基本的にレンズ側かマウントアダプター側の
どちらかを削らないと使用することが
できないものがほとんどです。

上が9枚絞りのNikkor-S Auto 5cm F2、
下がNikkor-S Auto 5.8cm F1.4の後期モデル。

明らかに9枚絞りのレンズは
スカートがマウント部から
せり出していることが分かります。
(ただし5.8cm F1.4も初期のものは
9枚絞りのレンズと同様にスカートが
せり出しているようです)

実はフィルム一眼レフカメラでも、
この絞り環が深いタイプのレンズはF、F2、F3など
一部のボディでしか使用することができません。

例えば同世代のボディに
Nikomatシリーズがありますが、
こちらのボディには装着することができないと
言われています。

 

【余談】

全く同じレンズ
(画像はNikkor-S Auto 5cm F2の9枚絞りモデル)でも、
よく見ると絞り環のスカート部の形状が
異なっている場合があります。

Fの最初期型も個体によって
細かな差が見られることがありますが、
これもその傾向と同様のものになると思われます。
このような違いも最初期のカメラの醍醐味かもしれません。

9枚絞りニッコールはそもそもの本数が少なく、
また外観上の違いがほかのものと
ほとんど見られないため
なかなか
注目されるような存在ではありません。

60年以上に渡り脈々と受け継がれてきた
Fマウントの源流として、
また当時のレンズの作りの良さを、
是非一度お手に取って試していただきたいレンズになります。

Fなどの当時のフラッグシップと
一緒に合わせてみてはいかがでしょうか?

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です